
楽器演奏が脳に良いことは聞いたことがある方も多いですね。子供4人全員が東大理三に行った佐藤ママのご家庭でも、全員が3歳からバイオリンを習っていたそうです。その教室はスズキ・メソードという、かなり特色のある教育理念の音楽教室。スズキ・メソードとは、なんなのか?他の教室と何が違うのか?スズキメソードについて調べ、具体的なレッスン内容について経験者にインタビューしました。
目次
スズキ・メソードの起源と受講人口
スズキ・メソードは、鈴木鎮一氏が1930年代から10年以上ヴァイオリニストを育成した経験を踏まえて設立した音楽学校「松本音楽院」を出発点とし、この音楽学校で育てた子供たちと共に全国で講演・演奏し広められました。
現在ではヴァイオリンの他、同様の教育法でピアノ・チェロ・フルートの指導も行われており、国内約2万人、世界46ヵ国・約40万人がスズキ・メソードを習っています。
他の音楽教室と違う特徴は?
・母語教育法
母語が育つときと同じように音楽性を育てるという思想に基づき、生活の中に良い音楽が溢れる環境をつくることから始めます。
・「親子で学ぶ」ことを基本とする
お母さんも一緒にレッスンに通い、家では先生となって繰り返し一緒に練習します。
・卒業制度
段階的に課題曲による「卒業検定」があり、楽器習得という長い道のりをモチベートする中間目標が設定されています。また、達成経験を繰り返すことで目標達成能力が開発されます。
どんな効果があるの?習っていた人ってどうなってるの?
名門音楽大学の教授や一流楽団で活躍する演奏家を国内外に多く輩出しており、楽器習得法として優れた成果を示しています。世界的チェリストヨーヨー・マや、テレビでよく見かける葉加瀬太郎もスズキ・メソード出身です。
また、音楽家だけでなく、世界的科学者や有名大学の学長、各界の組織長に就任するような出身者を多く輩出していることから、幼児教育として注目されています。
どんな教材を使って、レッスンはどんな風に進むの?
音楽教室には個人指導と集団指導があり、それぞれに特色やメリットがあります。スズキメソード は、集団レッスンと個人レッスンの両方を取り入れた教室も多いようです。レベルごとの課題曲を練習する形式で、指番号がついた独特の教本を利用しているそうです。
レッスンは個人レッスンの日と音感教室で集団で取り組む日と週に2回ありました。レッスンではスズキメソード専用の楽譜があり、進級するにつれてその教本自体も難しい曲になっていくというものでした。集団レッスンは音感を身に着けるために、色のついたキューブで先生の弾いた和音を当てたり、発声練習をするというものでした。
〜実際のレッスンカリキュラム例〜
※受講者が習った教室の一例であり、実際のレッスン構成やカリキュラムは教室により異なります。
【個人レッスン】
・指の運動(5分)
・楽譜を見ながらCDに合わせてドレミで歌う(5分)
・演奏練習(40分)
※親は不在、迎え時に今日の練習についての申し送り有
【集団レッスン】
・リトミック:音符の長さに合わせて体を動かしたりリズム打ちをする(10分)
・ソルフェージュ:発声練習後、教本を使ってドレミで歌う(10分)
・連弾の練習:2人ずつで演奏練習(各チーム15分)演奏していない子は音符に色塗り
※親は基本的には不在で見学は自由。発表会前は強制参加。
家ではどんな練習をするの?
楽器の習い事は総じて家庭練習を促す傾向はあるため、特有のことではありませんがやはり家庭練習は重視する先生が多いようです。課題曲があることで、次の曲に行くことが自主練習のモチベーションになったという意見もありました。
とにかく回数を弾く、反復する、弾いたらシールを貼る。
基本的に暗譜するまではやっていました。エチュードなどよりも曲中心、覚える時にはCDなどの音源を耳から覚えていました。
スズキ・メソードを習ってよかったと思ったポイントは?
選択式アンケートでは、習った楽器、譜読みや音感などの音楽的スキルが身についた他、「目標達成・上達に向けたプロセスが身についた」という意見が多くみられました。
ピアノは上達するのが早かったですし、学校の行事でもピアノを弾かせてもらう機会がありました。絶対音感もついたので、ちょっとした曲は聞けば弾けるようになりました。
譜読みや音感が身につきました。初めて見た楽譜でもどのように弾いたら良いか、どのような強弱を付けて雰囲気をもつ曲なのかが理解できるようになりました。
何かを習うということ、進めていくこと、少しずつ出来るようになる過程に自信をもつことができたと思います。また、進み具合を他の人と比較するようになったことで競争心を持つきっかけになりました。こつこつ努力することを一番たたきこまれた気がします。
スズキ・メソードのデメリットは?
親のサポートの大変さや、音楽を楽しむよりもトレーニングの要素を強く子供が受け取ってしまいがちな点がデメリットとしてあがりました。
親のサポートなくしてはレッスンを続けることは不可能ですし、教室側からも親の参加を強く求められます。送迎はもちろん必要ですし、発表会前になると、連弾の練習を自宅でもして下さいと言われるので、相手の子と日程調整をしてレッスン外でも練習をしなくてはなりません。普段の自宅練習も、先生が伝えた方法で練習するために母親が指導します。
発表会前には、会場の担当決めの為の会議等に参加しなくてはならないし、舞台袖での役割もいろいろあるので当日母に発表会を会場から見てもらった記憶はありません。
良くも悪くも集団プレイです。個人の力を伸ばすというより集団として標準化を目指します。みんなが一定のレベルに達成することが目的みたいな感じがします。また音楽を楽しむというより課題をクリアするための練習になりがちです。
今は理解できるが、習っているころは何がポイントなのか、なぜ今の弾き方がダメなのかなどが理解できませんでした。
本当に音楽の道に進ませたいと思っている場合には、音大の先生などにつく方が音楽の楽しさ、美しさ、その子にあった音楽などを教えてもらえると思うので、両方を経験してみてスズキメソードだけでは難しいと感じます。
まとめ
スズキ・メソードは、楽器習得や能力開発の効果が高く、「どの子も育つ、育て方ひとつ」という哲学に共感する熱心なお母さん達に人気です。その一方で、お母さんが一緒に取り組むことを理念としているため、日頃のレッスンをはじめとして、お母さん達の頑張りは相当なもの。取り組むには一定の覚悟を要する教育法といえそうです。